外注発注と技術力の低下


残業減らしで外注急増、大企業社員の劣化が止まらない | 組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進 | ダイヤモンド・オンライン

 

記事の内容は、題名の通りなのですが残業を減らす事を余儀なくされた大手企業が残業できなくなった分だけ下請けに丸投げする事により、これまでよりも技術力の低下が加速しているという話です。残業でカバーしていたのであれば、遅かれ早かれ劣化は進んでいったと思いますが、それはさておき…

 

大企業の社員は劣化している?

劣化しているというのが、どれ程の意味を含んでいるか判断は難しい所ではありますが、外注への丸投げが横行するようになって技術面では劣化して行ったのだろうと考えます。外注そのものが良い悪いという判断は立場の違いにより発生する問題だと思います。大手の企業が仕事を作って外注先がその仕事で生きていく。ヒエラルキーはあるとしても仕事を生み出してその仕事を分配していくシステムは多くの人に仕事を与えていると思います。自分もその中の一人だし「嫌なら辞めろ」という世界であったとしても、所属する会社の問題であって、まともな会社関係が作れているのであれば、まともな仕事ができると思います。

 

大企業の社員が劣化しているという点で感じるのは、事業拡大、売上拡大の弊害により「人で不足は外注で補う」から「面倒な事は外注に任せる」に変化していき、「外注に頼まないとできない」という所まで行きついてしまった結果が劣化に繋がってしまったと思うのです。私は自分でも手を動かしますが、外注発注して仕事を依頼する立場にもあります。仕事を会社単位でシェアするのは責任分解やコミュニケーションが煩雑になるため、どうしても丸投げ体質になりがちです。当然ながら、丸投げした部分はブラックボックスになるわけで技術力は劣化していきます。その代わりに得られるのは事務作業の力、仕事に波風を立てない力、人と人を繋ぐ力、資料を早く作る力のあたりが向上します。マネージメントという横文字にあてられると、何かカッコ良く聞こえますが要は調整役。必要な力ではあるものの、会社が売り物にしている技術では無いですから。

 

結局は年功序列の弊害なんだと思う

歳を取ると、おじさんたちは大なり小なり管理側に回ることを求められます。技術優先だと考えた所で若い人と同じように働く事はできません。身体能力として頭の回転が劣化するからです。技術を積み重ねた人はそれまでの経験値を応用する事で劣化分を補う事は出来ると思いますが、それは人並以上の努力を行ったからこそであり、人並の努力では太刀打ちできないです。能力的に若手に負けているオジサンに対して高い給料は払えないので、管理という如何にも偉そうな役割に回る事を求められます。

ところが、要領の良い若手は自分も歳を取ったら、管理職になってマネージメント側に回っていくのだろうと感じています。そして、その方が給料が良いと理解しています。では、10年後の自分を見据えた時に技術の勉強をするでしょうか、管理職の勉強をするでしょうか。どちらが正解というわけではありませんが、会社として求められる方向を向いていると、自ずと管理職の方を向いてしまうように思います。

 

大企業のブランドイメージ

違う視点として、技術的な事に純粋な興味がない 人が山ほどいるという事実もあります。「給料が貰えればいい。できれば働きたくない。」と言っている人が、新しい事を産み出すわけがないと思います。大企業では無難で有ることが必要とされるため、末端における新しい技術とは既に枯れきった技術だったなんて事も多いです。業種によるかも知れませんが、お客様に納める仕事で失敗は許されません。失敗できないなら手堅く進めるしかないでしょう。お客様のニーズという枠を超えて、大企業=手堅いというブランドがあるのだから何が何でも最先端というわけにはいかないと思います。テレビだろうが冷蔵庫だろうが会社のイメージとは密接に結びついていて、いくらチャレンジングな事をしたいと思っても、どこか(誰か)でブレーキをかけてしまう事が多いと思うのです。それを打ち破る人がいれば、メガヒット商品が生まれると思いますが。

 

終わりに

ビジネス系の記事を見ていると、日本ではマネージメントできる人材が不足を指摘する記事をよく見かけます。つまりプロジェクトを引っ張る人がいないという事なのですが、大企業では外注発注をする事がマネージメントの大きな仕事の一つになってしまっているように思います。うまく外注発注する事=良い仕事という評価が与えられてしまうのであれば、それを良しと考えるのが自然だと思います。

名プレイヤーが名監督ではないという格言の通り、技術者として活躍したいと思っていたのにマネージャーもやってくださいと言うのは難しい事なのだと思います。技術者からのクラスチェンジが昇進だと言われ続けたら技術力の劣化は激しくなるでしょうし、何をやるために会社に入ったのかわからなくなるのではないでしょうか。

 

大学生が会社を選ぶ段階で、こういう事を意識していく文化は無いと思います。管理者になりたいから技術的な下積みを積む必要が有ると考える人と、常に技術者でありたいから最新の技術に触れていたいという人では、若いうちの取り組み方も大きく変わると思います。管理者と技術者では技術者の方が下に扱われる場面が多ければ多い程、給料に差が出れば出るほど、真の技術者は減り劣化が進んでいくのではないでしょうか。そして大企業が潰れてしまえば、中小企業も影響を受けるわけで・・・大企業の劣化と技術者の苦労はしばらくの間は続いていくように思います。

 

 

 おしまい。