出口の見えない出口戦略

子供の頃に想像した40代は、間違いなくサラリーマンだろうなと考えていました。もっとも、私は幼い時から父親がいなかったため、子供心に抱くサラリーマンとはテレビで出てくるイメージ(営業職のパターンが多くクライアントから罵声を浴びせられる。夜には居酒屋に行き、遅くに自宅に帰る)でした。年配の方からは様々な武勇伝を聴くのであながち途方もない話ではないと思っています。

 

40代と言えば不惑の歳。これから先に新しい事を始めるというよりは、いかに老後を迎えていくか・・・つまり撤退戦、クロージング、有終の美という若干ネガティブな発想が付きまといます。逆立ちしても20代から40代に向けて上る階段の方が勢いが強く、40代から60台に向けて下る階段は転落死の危険性すら感じます。
私の父親は風のうわさでは60歳を待たずして逝去したようで(知らされていなかったため、葬式にも出ていない。)晩年は長い間入院しているようでもありました。一般的な話として親と子は身体的特徴が似ている事が多いのだから60歳で死ぬ可能性もそれなりに考えておく必要が有ると考えるようになりました。

誰かにこういった事を言うと、よく「子供が大きくなるまで頑張らなきゃ。」と言われるのですが、本当に余計なお世話です。「子供が大きくなったら死んで良いよ。」とは一言も言われてはいませんが、真に子供のためを考えるのであれば健康で長生きをし子供たちの手を煩わすことなく死んでいく事であり、子供が成長した時点がゴールではありません。それこそ子供が大きくなるまで頑張ってがむしゃらに働いて、脳梗塞で倒れてしまっては何のために働いてきたのか分からなくなってしまうでしょうし、保険金で解決する事だけしか残されておらず「もっと早くこの世を去った方が家族のためになった」なんて事はなりたくありません。だから、「子供が大きくなるまで」などと意味のないタイミングを見据えるのは何だか違うように感じています。

そんなこんなはありますが、自分が「60歳でまでしか生きられないとしたら。」と、「60歳を超えて長生きできるなら。」という具合に思案するようになったのです。
 このような事を考える中で「出口戦略」という言葉がマイブームです。

敗勢あるいは損害が甚大な状況下で、いかに人命や物資の損失を最小限に抑えて軍を撤退させるか、といった検討や実施に対して出口戦略という用語が用いられる。

出口戦略 - Wikipedia

言葉の意味する所とかなりの距離がありますが、今の私が40代の年齢を重ねるという事は撤退戦の状況に当てはまります。「60歳でまでしか生きられないとしたら。」の方に該当するのですが、毎日のルーティーンでしか生きていられない自分からどうやって脱却するべきかと言う点です。常にアクティブな気持ちを保ち続けて仕事にまい進していた人が退職した途端にやる事が無くてボケるというような話を聞いた事があります。大きな変化と言うのは心と体に大きな負担を強いるものなのでしょう。仕事をしている人の大半はルーティーンで生きていると思います。ルーティーンはある意味思考を止めさせ楽に生きる力にもなる事は分かるのですが、今の仕事が同じように続くわけではないし、生まれたからにはいつか死ぬわけだし、始めた事はいつか終わる事は決まっているしという所まで考えておかないと、外的要因でルーティーンが壊された時に自分が正しく判断し適切な行動を取れなくなる恐れがあります。
大袈裟に書きましたが、簡単に言えば「今、働けなくなったらどうするか?」という事を何かのきっかけでシュミレーションしておくという活動です。そうすれば恐れる事なく自分でルーティーンを止める事も可能になるわけですから、心の余裕度が上がります。60歳になって働けなくなっても、既に検討済みの事ですから準備万端になっているはずです。

 

合わせて「60歳を超えて長生きできるなら。」も考えるのですが、少し先過ぎて難しいというのが本音です。妻とはリタイアしたらのんびり旅行に行こうと言われていますが、間違いなくシンドイと思います。身銭を削りながら優雅に旅行できる程、裕福な生活では無いですし子供の事を考えたら、そんな貯蓄しておく事もできません。まだ働ける今だからこそ、明日稼げばいいと思えるのだから本当は今現在をやり繰りしてより良い生活のためにお金を使う方が賢明なのだと思います。60歳過ぎてもそれなりに稼げる力を維持できなければ、それこそ身を屈めて小さくなりながら生きる事になります。でもそれはお金に依存した生き方であって、多くのお金が無くとも楽しく生きる事はできるはずです。そのためには長期にわたり人間関係を含めた根回しが必要になるわけで、それはそれで大変だなと思ったりもするのです。

 

人それぞれ、何が正解か分かりませんし、明日起こる事も良そうする事はできません。でも色々と想像する事は可能です。「今がいつまでも続くわけじゃない。」当たり前だけどちゃんと考える事が出来ない事が多いので、少しずつ出口戦略を固めて行きたいと思うわけです。

  

おしまい。