退職する後輩を見送る

また後輩が退職する

彼(私の後輩)との縁は、彼が2年目の時になると思う。今から10年以上は前になるだろうか・・・。ずっと一緒に仕事をしてきたわけではないけれど、つかず離れずの距離を保ちながら同じ部署にいた。プライベートでも何回か遊びに行った事もあり、もっと仕事に余裕があれば、もっといろいろな事を楽しめたかもしれない。

 正直な所、彼が退職するにあたり悲しいとか寂しいという感覚は無い。別の場所で頑張れると言うのなら、それを応援してやりたい。近くで仕事をしていたメンバーには強い思いが有るかもしれないが、仮に今日まで一緒に仕事をしていたとしても、そういった感情は生まれないと思う。

 

退職がネガティブに思われる年齢

40代ともなれば、数多くの先輩、同僚が会社を去って行った。同期のメンバーも3分の1になるまでは通知が回って来ていたが、それ以降は見かけなくなってしまった。それもそうだろう、若い頃には新しい夢や希望(教師になるとか、会社を立ち上げるとか)を持ち会社を去る場合も多くネガティブでは無くポジティブな場合も多かった。更に歳を取るにつれ女性であれば寿退社、男性であれば家族のためという理由で会社を去って行った。30代前半…。ここまでは、まだ可能性を残している時期であるため、ポジティブとは言えないが完全にネガティブとも言えない、妥協をはらんだ理由が多かったと思う。そして30代後半からはきっつい理由しか聞こえてこない。精神的に病んでしまった(会社に来れなくなった)とか、親の介護のためにやむを得ずとか。言いたくない理由も増えて来たのだと思う。偶然、人づてで辞めてしまった事を得る程度となってしまった。

彼は30代中盤であり、まだ可能性を残している段階だ。希望を持って転職するというにはほど遠いもののこれまで培ったスキルを活かしてポジティブに頑張って欲しいと思う。

 

誰が辞めても組織は変わらない

彼は優秀だった。最優秀とは言わないけれど、そつなくこなすタイプだった。しかしそれが故にキツイお客様の保守担当として10年近く対応してきた。対応させられてきたというのが正しいかもしれない。彼の処遇を何とかしよう、彼を成長させようと思ってくれた上司はいたのだが、その上司以外は全くもって何も考えていなかった。恐らく彼が辞めるなんて、これっぽっちも想像していなかったのだろう。もっとタチの悪い事に、彼に違う仕事をさせる事が彼にとって負担を与える事になると考えていたかも知れない。上司達は人材を大事にしようとしているのだけど10年かけて人を育てようとしているため部下には全く響かない。環境的にも良くなかった。それは彼の代わりができる人を作る事が出来なかった事。全ては予算ありきだという考えに異論は無いのだけど、予算上に人が成長する機会を含めておかなければ、人をローテーションしていく事は出来ないし成長した人材を他所で使う事が出来なければ、給料が上がっただけの無駄遣いになってしまう。どこの会社でも、そんな感じなのだとは思うけれど。

しかし誰かが辞めるとなれば、代わりの人は出てくるし、何とかして仕事を回していく。回していける。両手両足で収まらない人が去って行くのを見送ったけれど、結果的には何とか出来てしまう。誰が辞めても組織は変わらないし、誰が辞めても良いように事前に対策を打つ事もしないのだと思う。周りの人に迷惑がかかるから辞められないという話も聞くのだけれど、早めて言っておけばいいだけの話。段取り良く辞めればいいだけの事。ダメなのは直前にしか情報を共有しない上司たちだと思う。

 

彼の背中を押したけど、自分の背中は押せないでいる。 

 IT業界は変化が速く自分で勉強しておかないと、いざと言う時に役に立たないという事は多々ある。現実的には長時間の残業で疲弊し、寝る時間を確保するのがやっと…。お客様向けの調整を優先するあまり、何段階にも渡る稟議や承認行為の山。こういう環境で仕事ができる人材と言うのはかなりのマゾであると同時に、数年先の未来さえも目をギュッと閉じて見ない事が出来る特性の持ち主だと思う。40代の今、数年先を想像したら、今と何も変わっていない自分が想像できた。疲弊した今の自分では何も変わっていない事は明白である。ただ子供達が大きくなっている事に感慨深く感じているに違いない。

自分の背中を自分で押すのは難しい。ましてや家族がいると道から外れること自体が今の何倍もリスクを負う事になると考えてしまう。でも、40代後半になったら、背中じゃなくて肩を叩かれる可能性だってあるわけで・・・そういう未来も直視しないとダメなのだと思う。自分の背中は押せないけれど、自分で歩き出す事はできるのだから。いきなり飛び出す気は無いけれど、飛び出すための準備を着実に進めておきたいと思う。

違う世界に飛び出した彼から見た私たちはどのように見えるのか・・・暫くしたら話を聞いてみたい。

 

 

おしまい。