理由なく安売りした仕事が続くとは思えない。

伝聞でしか聞こえてなかったのだけど、外注さんから費用交渉の話があり、それは真っ当な意見でプロジェクト全体で検討すべき問題だと感じたのだけれど、部長クラスから放たれた言葉は…

 

「別の外注に変えるしかないね。」

 

という話でした。

外注発注の考え方は業種の慣習によって状況は大きく変わると思うので一概には言えない事ではありますが、発注される側にとって金銭的に無理がある事は長期間継続する事は難しいと相場が決まっています。将来のビジネス拡大など戦略的な判断をして赤字になっても仕事をする場合はあると思いますが、今やそれも真っ当な戦略ではない可能性が高いです。とは言え、旨味の無い仕事でも、この先の仕事がなくなるよりはマシという考え方はあると思うので短期であれば妥協する場合はありますが、長期で耐えられるわけではありません。

 

私が担当しているのは、枯れたシステムの保守をする案件です。枯れたシステムではあるもののシステム改修が多く複雑に絡み合ったプログラムを作り続けています。絡まりすぎて、色々な知識を蓄積したベテランでなければ低コストで対応するのが難しいと言うのが現状です。それでも会社の思惑は「安い外注に変更する事は出来ないか」という事を優先してきます。

 経験を積む → 効率化される → 全体のコストが下がる

と言うのがこれまでの流れでした。これには欠点があって経験を積んだ人は年齢を重ねていくので給料が上がります。だから、経験を積んだ時点で部下にそのスキルを受け渡していく必要が発生します。そうしなければ同じ仕事を繰り返しても、稼ぎが目減りしてしまうからです。更には一定量の仕事がコンスタントに存在していれば話は簡単ですが、このご時世ではそんな事も言ってられません。

 

これまでは恵まれていただけ。これからはもっと厳しくなる。

しかしそのように言われたからと言って納得してしまったら思考停止なのだと思います。これこそブラック企業の生き方なのではないでしょうか。 厳しくなるからこそ、別の方法を模索する必要が有るんじゃないかと思うのです。冒頭の通り安い外注さんを探す事も一つの方法かもしれません。しかし、いつまでそれを続けていくのでしょうか。安くやってくれる外注さんがいつまでもいるという保証なんてないのです。厳しくて無理であるならば、お客様と値上げの交渉をする事も一つでしょうし、残業を減らす事や無駄な依頼を減らす事も一つでしょう。それでもダメなら撤退するのも一つの策だと思います。でも、偉い人にはできない。自分の代で大きな変革は起こしたくないと思う人ばかりだから。問題は先送りされ、現場だけが疲弊していくというスパイラルです。

 

契約や金の話になると、市場価値とか相場などを基準として使われる事が多いと思います。何に対してどれだけ対価を払うか、その対価を払って満足できるか。ぶっちゃけ会社同士の場合、担当者は自分のお金という意識が希薄になりがちなのだから余程優秀な人でなければ正しい判断は困難だと思います。市場価値とか相場と言うのは感覚的なものであるため、以前と同じサービスレベル以上でなければツカエナイ会社の烙印を押されてしまうように思います。この流れをひっくり返すのは非常に難しい話で、小売業のように沢山の顧客がいれば、自然に市場価格や相場が形成されていくのですが、会社対会社となってしまうと比較対象が少ないために適切な市場価値を見極める事は困難なのです。そして安くできた方が正しいという評価だけが残っていく…。いつかは負のスパイラルを断ち切らないと疲弊する人だらけになってしまうように感じています。

 

ヤマトさんが値上げしたのも、真っ当なビジネスを行うために必要な事だったのだと思います。それは慣習を引きずったままコストを下げていくには限界があるという事を示しました。もはや効果的なコストダウンは、人間が働かない事以外には存在しないのかも知れません。そうでなければ、革新的な会社が市場を破壊してくれる事を指をくわえて見ている事しかできないのかも知れません。何れにしろ、日本的で歪な市場がこれ以上長続きしないように願うばかりです。

 

 

おしまい。