裁量労働に残業の考え方があるのあろうか

裁量労働について議論されているようですが、裁量で働くのであれば残業という考え方は無くて、仕事の時間が短くする必要があるかと言えば、そうでも無いという所から始まっていると考えていました。

 

もっと言えば、ウチの会社では残業時間をカットさせる体の良い口実だと思っていました。

 

労働時間=労働力(≒成果)=対価(給料)という発想と、成果物(≒売上貢献)=対価(給料)という考え方もあるわけです。

 

商品を一つも売れない営業がいたとして、社長は対価を払うでしょうか?営業のえの字も知らない私が言う事ではないのですが、商品を売る事が営業の本分と捉えるならば、「売ってナンボ」と言うのが根底にある成果基準のように思います。もちろん会社に所属している以上、商品を売る事とは直接関係のない作業をさせられる事もあると思いますが、それは固定給の範囲なのだろうと思います。客が来なくとも店を開けておく時間が必要だと考えれば労働時間=対価(給料)の部分があってもやむをえないからです。ですから固定給+歩合給となっているならば理にかなっていると言えなくもありません。(やむをえない部分は様々な手法で無駄を削られて行くのだと想像できるけど。)

逆にコンベアに乗った製品を組み立てるライン工の方にとっては一人で効率を上げるには限界があり、一人で出す成果も労働時間に大きな影響を受けると思います。ですから、労働時間=対価(給料)となる部分が大半で歩合給となる部分は小さくなると思います。労働時間は会社にコントロールされているため、自身に大きな裁量が無い代わりに時間を満たせばそれなりの給料を貰う事が可能です。

このように職種によって給与体系の考え方を変える必要が有る事は明白ですが、「空き時間ができやすい」職種は労働時間で対価(給料)を払おうとすると無駄が多くなるため裁量労働という考えに至りやすいように思います。

 

裁量労働に向く職種だったとしても…

生産性を著しく下げる要因は「客のわがままを聞く事」だと思います。裁量労働とは裁量が無いと機能しないわけで、客のわがままによりその裁量に著しい制限を受けるのであれば、それはもう裁量労働ではないと言えるでしょう。もちろん1週間前から決まっているミーティングは裁量を制限しているわけではありません。スケジュール帳にかなり前から書かれている予定は恐らく自分の裁量(意思)を持って決めたはずなのだから、個人の裁量で決めたといえなくもありません。しかし客のわがままは突発的でかつ思い付きの割込み作業に発展する事が多くあります。担当レベルではなく権力を持った役職者がその刀を振るえば、部下たちがいそいそと業者の所までやってきて、明日までに資料を作っておいて!と平気な顔で言うようになるのです。

 会社に勤めているのに本当の意味で裁量を持つ事が出来る人間は一握りだし、特別な能力を持っているような人でなければ裁量を振りかざす事なんて無理だと思います。

 

裁量労働に会社側のデメリットは無い

裁量労働の良い所は、会社にとってのデメリットが全くない事です。デキナイ社員がのんびり仕事をしたとしても成果さえ出れば問題ありません。生産性が低かったとしても残業代を支払う必要が無い。逆にデキル社員が生産性をあげれば、それだけ多くの成果を出す事が出来る上に、生産性が高くても結局はある程度の労働時間によって拘束する事が出来るので、たくさんの仕事を処理させる事が出来る。(しかも残業代抜きで。)

上司が言う仕事を満点でこなす事が出来てもそれは昇給・昇格には繋がらないし、自分の成長にも繋がらない。でも150点取った所で単純に給料が増えるわけでもない。

 上手い事で来ていると思いませんか。

 

裁量があってもフリーランスではない

会社員の裁量労働はどこまで行ってもフリーランスではないのだから、会社の指示には従う必要が有るしやりたくない仕事をやる事も必要です。やりたくない仕事を片付けるのに生産性が上がるでしょうか。残業を気にして仕事をして真っ当な成果を出せるでしょうか…。会社の枠組みがある以上、フリーランスよりも自由に仕事をする事は難しいです。その代わり中途半端な成果であっても、前月と同じくらいの給料が保証されているという最大のメリットがあります。 売れない商品を作っても会社が給料を払ってくれるのです。そうなれば上昇志向でない人は生産性をあげる事なくのんびりと成果を出せばよいと考える事になるでしょう。逆にフリーランスであればそんな事も言ってられません。仕事が切れてしまえば収入が無くなるのですから、キッチリと計画を立ててある程度の生産性を保ちながら仕事を探していく必要が有ります。

 

裁量労働の労働時間が長時間化する事は自然な事なのではないかと思うのです。それが仕事量が多い事が原因だろうが、仕事が無さすぎる事が原因だろうが結果的に無関係なのです。締め切りが近ければ、徹夜でもして仕上げをするだろうし、締め切りが遠ければ、それに合わせてのんびりと仕事をするだけです。

労働時間が長くなるというのは、平たく言えば残業って事でしょう。裁量労働だからと言って、残業が無くなるなんて事は考えにくいです。できる人には仕事が集まるし、できない人は会社のお荷物扱いになるだけ。個人が強い意志を持って無駄だと思う仕事はやりませんと言えるようにならなければ、裁量労働を拡大した所で体の良い残業カットで終わってしまう事でしょう。

役職者の方にはぜひとも、「この作業をこいつにやらせたらいくら払わなきゃいけないのか。」と言うのを意識しながら作業指示をして貰いたいものです。そうやって無駄な仕事自体を減らして、部下の生産性を上げる事を意識していただきたいと思うのです。

 

おしまい。