働くからお金を貰えるのか、お金を貰えるから働くのか

働き方改革ーと言って世間的に残業を減らす動きが進んでいて、良い事だなと思います。そう思いながらも、推進方法が歪んでいるような気がするのです。

 

働くからお金を貰えるのか、お金を貰えるから働くのか。給料先払いという会社はあまり聞いた事がありません。仕事の対価としてお金を払うというのが通例の考え方だと思います。それこそ成功報酬なんて考え方もあるでしょう。しかし、給料と仕事の対価のバランスだけではなく「時間」という要素が含まれていると思います。会社でもある程度の役職に着くまでは、時給換算で働いていると言っても変わりありません。

 

仕事の対価(=お金)=働いた時間

という公式は、自ら環境をコントロール出来ない仕事にとっては必要な考え方だと思います。

  • 宿直で見回りをする。
  • 工事現場の誘導を行う
  • コールセンターで電話を待つ。
  • 電車の運行をする。

どうしても、時間の縛りからは抜け出せないため、拘束時間に応じた対価は必要でしょう。その時間に仕事をする事に意味があり他の時間に行ったとしても、仕事としての意味は無くなります。(仮に何も生み出さなくても、待つ事に意味がある。)

固定費みたいなものですね。ガスも電気も電話も使わなくても基本料は必要です。使うためには準備しておく必要が有りますから。

 

オフィスが中心の会社員であればであればどうでしょうか。

大半の会社は始業時刻と終業時刻が決まっています。本来は時間に縛られる必要は無いのだけれど拘束時間として定義されてしまっているため、前述のような「その時間にどうしてもやらなくてはならない仕事」と同じように会社に座っているという側面があるのではないでしょうか。「時間的に拘束されていた時間なのだから対価を貰うのは当たり前だ」という論理が働く事により、成果が出ていなくても対価のやり取りが発生してしまうのだと思います。会社に勤めるという考え方は、毎月の給料が一定額は支払われる事によりリスクヘッジをするという考え方なのだから、時間拘束により対価が支払われるという形式は都合が良いと言えば都合が良いとも言えます。

でも、このやり方では「金(残業代)は払うから仕事しろ」とか、「給料は払っているのだから残業して当然」という古い感覚から抜け出せないと思うのです。この感覚では仕事の対価=成果 ではなく、仕事の対価=働いた時間の方がしっくりくるからです。これでは、時間当たりの生産性をあげる必要を感じなくなってしまうでしょう。ダラダラやった方が余計にお金が貰えると思えば、その方が楽ちんですから。

 

私は働き方を変えたとしてもに拘束時間(作業時間)の概念が入ってしまう点が、歪な感覚を拭えない理由なのだと感じています。しかし、「必要な仕事」に対してどのくらいの価値があるのか明確に定義できるかと言うと、簡単ではありません。ひたすら赤字を垂れ流していても社員には給料を払う必要が有ります。儲けていなくとも会社は従業員に賃金を払う必要が有るのです。(そうしないと、炎上したプロジェクトの人員は給料が貰えない事になってしまう…)

 そう考えた時、働き方改革のアプローチとして管理職が部下に与える仕事の価値を自ら判断して「無駄な仕事」を減らし部下の生産性をあげる必要が有ると思います。単純に言えば、その仕事にいくら払いますか?という事。

仕事の価値を金額に換算するなんて簡単な事で、部下の時給×必要な時間をちょちょいと計算するだけです。「この時間内でやってくれ」という依頼はそのまま「この金額で収まる範囲でやってくれ」と言っているのと同じになります。もちろん短納期になれば残業代も考慮する必要が有るので必要な金額は上がる事を計算する必要が有ります。

 

個人単位で「残業をしないように頑張ろう」というのは無理があると思うのです。管理職が自分の持つ予算をいかに効率よく使っていくという事を念頭に、部下への仕事を割り振っていき、無駄な仕事をさせない事が「残業を減らす」働き方改革になるのではないでしょうか。この考え方の先には、計画した時間より短く成果を出した(生産性が良かった)場合には、その部下に対し残りの時間を自分の好きなように使える権利が与えられるようになると都合が良いと思います。大半の場合、早く仕事を終わらせたのに次の仕事を詰め込んでくる上司が多いので、生産性をあげる気にならないという問題があるからです。これも 仕事の対価(=お金)=働いた時間 という考えから抜け出せていない事が問題ですし、「頑張って早く終わらせたら仕事が増えた」という笑えない状況に対して、部下のモチベーションを考えない上司が多すぎる事も問題だと思います。

ぶっちゃけ、上司も自分のお金を払って部下を雇っているわけではないですからね。自分のお金であれば慎重に使うでしょうが、会社のお金なんですから、ある程度は大雑把になるでしょう。

 

普通の社員は「お金を貰えるから働く」というモチベーションだと思います。無給でも働きます!なんていうのは、生活が成り立ちませんし趣味でしかありません。でも、今の日本では「お金を貰えるから働く」というモチベーションでは(給料が時給だと考えると)生産性をあげる必要はありませんから、ただ闇雲に目の前の仕事を片付けていくだけの働き方になってしまうと思います。そうではなく、「働くからお金を貰える」というモチベーションに持って行く事で生産性をあげようと考えられるようになるのではないでしょうか。結果を出すのは早い方が良い。無駄な仕事をせず必要と思える仕事を優先する。そうやって「自分から働く事ができる人材」を優遇していけば自然に生産性も上がるし無駄な残業もなくなっていくのでは無いかと思います。

とは言いながら、過去を捨てられない管理職がのさばっている会社では何も変えられないとは思いますが…

 

おしまい。