みんなにかばって貰わなくてもいい。辛い時は逃げる事が役に立つ。


松本人志、愛媛ご当地アイドル自殺に持論 「死んだらかばう風潮が嫌」 - ライブドアニュース

 

亡くなってしまうことは、無くなってしまうことになるわけで、何かを得たいと思って頑張っていた物の全てを失う事になってしまったのではないかと思います。それらが記憶や記録に残ったとしても、決して嬉しくは無いはずで・・・。

 

個人的には引用先の記事は少し煽り気味になっているようにも見受けられますが、「死んだらみんながかばってくれる風潮がすごく嫌なんです」という松本さんの言葉は胸に刺さりました。

 自分の周りでは自死に至った方は知りません。(過労で亡くなられたと思われる人は何人か聞いた事があります。)ですが、その前段階であるメンタルの不調に陥る方はかなりいらっしゃいます。仕事に前向きで何でも引き受けてしまうー簡単に言えばいい人ーが追い込まれる傾向にあるでしょう。

  • 「他に誰がやるの?あなたしかいないんだよ。」
  • 「他の人に迷惑をかけるつもりなの?」

と言った責任を押し付けるパターンや

  • 「この仕事をやり遂げたらステップアップできるよ。」
  • 「君が適任だと思うんだ。他のヤツでは心配で…。」

と言った個人が成長する事を押し付けるパターンもあります。

依頼されるというシチュエーションは上下関係がつきもので上から下に向かって言われたらなかなか逃げる事が出来ません。更に恐ろしい事に依頼する側は「やって当然だろうと思っている」というフシがあります。依頼する側は「仕事」という言葉が持つ強力なパワーを使って人をコントロールします。「仕事なんだから」という言葉の前には合理的な考えが役に立たない事があります。

 

例えば

  • 大事な会議だから休めない。
  • この仕事は他の人に頼む事が出来ない。

その仕事をやる必要があるかどうかは、自分が向き合う仕事との関係性で決まるはずです。しかし合理的な判断を下すことは難しいでしょう。関係者の誰もが納得する理由を見つけづらいからです。そうなってしまうと・・・

「自分が(誰にも頼らずに)頑張ればみんな丸く収まるのだから頑張ろう。そして頑張った自分を誉めて欲しい。」

精神的に疲れていても、体力的に疲弊していても、他人から文句を言われるくらいなら自分が我慢したら良いんだ。そう思ってしまえばその場は楽になれます。

 

その反面、言い訳として有効なものがあります。

  • 風邪などの病気、高熱(死にかけ)
  • 親族の冠婚葬祭(特に葬)

自分自身もそれくらいの理由があれば、休んでも(仕事が出来なくても)仕方が無いと思えるから。逆に言えば、他人も同じような理由でなければ休んではいけないと思っているから。自分だけがOKじゃダメなんです。他の人も許してくれなければ言い訳にはならないのです。

 

なぜ、言い訳をしなければならないのでしょう。

仕事をするなら気力、体力が十分に備わっている時しかそれなりのパフォーマンスを出せないので、ダメな時はすっぱりやらないという選択肢もあるはずです。しかしどんなシチュエーションでも頑張った事をアピールし、ダメだった時に言い訳したいのです。この辺は会社の風土とか業界の特性とか自分の思いが複雑に絡みあってくるためどこまで頑張るのが良いか答えはありません。その考え方が自分と合うか。それだけだと思います。(例えば消防士とか警察官とか自衛隊員とか難しいと思います。)

日本の文化的に真面目で勤勉、最後までやり遂げる。輪を持って貴しとする。という事を美徳として刷り込まれているからのような気がします。自分だけ頑張らない(頑張っているように見えない)のが気まずいなぁという割とどうでもいい感覚が根底にあるからでしょう。上司がいると部下が帰りにくいとか、付き合いで残業してしまうとか、日本人の典型ですよね。

 

  病気だったら許してくれるだろう、葬式だったら許してくれるだろう、鬱になったら許してくれるだろう・・・そうやってエスカレートした先には自分がいなくなったら許してくれるだろうと考えてしまうような状態が待っていると思います。「死んだらみんながかばってくれる風潮」っていうのは、100人が100人とも許してくれる(と思われる)風潮とも言いかえれるんじゃないかと思います。

 

逆に追い詰めてしまった人は「死ぬなんて思ってなかった」と言うでしょう。それは「嫌なら辞めれば良かったじゃないか」という最大の逃げ口上を持っているからです。職場の上司も一緒です。「そんなにつらいなら言えばよかったのに」とか「周りの人は気づかなかったの?」とか。私の後輩で鬱になった人も辛そうなそぶりを見せませんでしたし、私自身は気付きもしませんでした。やはり私の頭の中にも「気軽に言ってくれても良かったのに」という思いが一番に出てしまいました。言えないから辛い状況になるわけで、それは一つの要因だけじゃないんです。残念ながら画期的に解決する方法はありえません。人間同士の関係性から生まれる事だから、不完全で明確な区切りをつける事が難しいためです。そうなると(誰かの助けを借りてでも)自分が変わるか、相手を変えるしかないという事になります。

 

そう考えると、言い訳という盾を使って耐える事よりも、軽やかに逃げ出す方法を身に着けておく方が良いのだろうと思います。まさに「逃げるは恥だが役に立つ。」みんながかばってくれないのなら、一目散にそこから逃げ出す方法を考える方が良いでしょう。誰かは自分の事を責め続けるかも知れない。でも、全員が責め続けるわけじゃないんです。誰かは助けてくれるはずなんです。

 

死ぬ事は最強の武器でも盾でも切り札でもないんだよなぁ。
命を失ってしまったら何も残らないんだから。

 

おしまい。